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搬送・巻取時のトラブル改善に役立つ 「低たわみ(均一ニップ)構造ローラー」

弊社が寄稿した雑誌記事の一部を抜粋して掲載しています
出典:月間コンバーテック2019年10月号(加工技術研究会様)

主な特徴

1.低たわみ構造(均一ニップ)ローラーが求められた背景

近年、フィルムの薄膜化・高機能化が顕著に進み、生産性を目的としたウェブの広幅化や高速搬送がフィルム業界のトレンドとなっています。このような市場動向に伴い、ウェブハンドリングには新たな課題も山積みであり、ローラーメーカーに対する要求も年々高まっています。

ゴムローラーにおいてはゴムの強度、耐熱性、非粘着性など様々な要求特性がありますが、今回はローラーの均一ニップ性についてご紹介します。

ウェブに対して均一にニップさせるためには、可能な限り変形しない(たわみにくい)ローラーを設計する必要があります。ローラーのたわみを考慮してゴムにクラウン加工を施すことも有用な手法ではありますが、ローラーの左右、中央で周速差が生じ、場合によっては期待されるような効果が発揮されないことがあります。

当社はゴムへのクラウン加工ではなく、ローラーの芯材自体に技術を織り込んだ低たわみ構造(均一ニップ)ローラーをご提案しています。

 

※ガラス板に下からゴムローラーを押し当てた状態のニップ形状比較

低たわみ(均一ニップ)構造ローラーは、たわみの影響が少なく、ニップ幅がほぼ均一なのに対し、

従来構造ローラーは、たわみの影響が大きく、中央部のニップ幅が細くなっている事がわかります。

 

 

2.ローラーのたわみについて

ローラーのたわみは、基本的には材料力学計算(梁はりのたわみ式)によって計算されます。計算は単純等分布荷重が一般的に用いられ、芯材の密度、弾性率、外径、厚み、長さに依存します(図1)

広幅フィルム機械向けローラーは必然的に長さ(L)と径(D)の比率であるL/Dが大きくなり、たわみ量は長さ(L)の4乗に比例して大きくなるため、対策が必要となります。

 

 

3.均一ニップローラーの構造と特長について

均一ニップローラーの構造は 図2 に示すように、中央に支持部を設けた内筒と外筒からなる二重管構造です。従来構造では支点がメタル部にあるため中央部が大きくたわみますが、均一ニップローラーは内筒に支持部を設けることで内筒のたわみを打ち消すように外筒をたわませることができます。

そのため、中央支持幅や内筒、外筒の厚み等を設計することで、内筒と外筒の各々のたわみをコントロールし、事実上のたわみをゼロに近づけることが可能となります。

また、均一ニップローラーは構造上、従来構造よりも重量が大きくなるため、芯材は軽量・高剛性である CFRP が採用されるケースも多くあります。

 

 

4.たわみ量の実測結果

次に同じ弾性率の CFRP を用いた従来構造と均一ニップ構造のローラーを製作し、たわみ量を比較した実験結果についてご紹介します。

測定条件:図3 の写真に示すように中央100 mm幅に各荷重を掛けた際の荷重たわみ量を測定。

従来構造のローラーと比較して、均一ニップ構造にすることでたわみ量が大きく抑制されていることが分かります。

 

 

5.FEMによる構造解析

当社は均一ニップ構造を設計する際にFEM(有限要素法)解析を用い、緻密な計算結果に基づいて構造を決定しています。従来の一般的な材料力学計算結果を基にした構造設計とは異なり、ローラーの形状をダイレクトに反映できる計算手法であるため、より高精度なたわみ計算、ローラーの構造設計が可能となっています。
以下に、当社で行った従来構造ローラー(鉄)のたわみ実測およびFEM解析結果を紹介します。
図4 のグラフを見ると、FEMによる解析値は従来の材料力学計算とは異なり、実測値と一致していることが分かります。1/100 mmオーダーの精度を要求される場面でも、FEMによって高精度な構造設計が可能となります。

 

 

 

6.ニップ幅の実測結果

均一ニップ構造がニップ幅に与える効果を確認した実験結果についてご紹介します。
図5 のグラフを見ると、従来構造(鉄、アルミ)は端部と中央部のニップ幅の差が大きく、弾性率の小さいアルミの場合、さらに顕著な差が出ていることが分かります。しかし、均一ニップは端部と中央部の差は1 mm程度までに抑えられています。均一ニップ構造によるニップ幅の均一性に大きな効果が現れていることが分かります。

 

 

7.均一ニップローラーの適用用途

ウェブハンドリングにおける大きなトラブルとしてウェブの蛇行、しわ、キズの発生が挙げられます。ニップするローラーにおいて、ニップが不均一であることはウェブハンドリングにおけるトラブルの原因となり得えます。

均一ニップローラーとは読んで字のごとく均一なニップを得るためのローラーであり、ニップを必要とする様々な用途に対するトラブル対策ローラーとして、ニップローラーやタッチローラーのみならず、コーティング、絞り、ラミネート、プリンティングといったコンバーティングプロセスにおいての展開も可能です。

 

 

8.ニップローラーとして使用した場合に期待される不具合改善効果

実際に極端なニップ不均一とするために当社の試験装置においてニップローラー片側のニップを強くした状態にて搬送を行った場合、ニップが強い方向へウェブの横移動が見られました(図6)

また、ニップの均一性を考慮しない従来構造ローラーでは、たわみにより中央部のニップが細くなります。たわみが発生することで 図7 のように、ウェブに中央方向へ向かう力が生じてトラッキングしわが発生します。

これらの課題を改善させるために均一ニップローラーは効果を発揮します。

 

 

9.タッチローラーとして使用した場合に期待される不具合改善効果

タッチローラーを使用する目的としては、巻取時におけるウェブ層間への空気巻き込み量のコントロール、および巻き取ったウェブの位置ズレを防止するために使用されます。

例えば、硬い巻取ロールが欲しい場合は、タッチローラーを硬くする、あるいはローラー径を細くすることによって、層間空気の巻き込みを抑制して硬い巻取ロールを得ることが可能です。

しかし、タッチローラーのゴム材質を硬くすると、ゴムの追従性は低下し、ウェブの厚みムラの影響が顕著に現れ、巻取ロールにゲージバンドを発生させる可能性があります。

また、たわみの大きいタッチローラーでは、中央部への過剰な空気巻き込みが重なることでトラブルが発生する可能性はより高くなります。したがって、層間空気の巻き込みを抑制した硬い巻取ロールを得るためには、ゴムの追従性(柔軟性)を残しつつ、たわみを抑制した構造が必要となります。

このため当社ではタッチローラーは均一ニップ構造を推奨しています。

 

 

10.おわりに

今回ご紹介しましたニップローラーやタッチローラーの実例から、均一にニップすることが様々なトラブルを改善する効果が非常に高いことが分かります。

当社では、今後も均一ニップが可能なローラー芯構造を採用いただくために積極的にご提案したいと考えておりますので、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

⇒ 低たわみ(均一ニップ)構造ローラーの情報を見る

 

 

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